革靴には、さまざまな作り方(=製法)があります。

どんな製法で作られているかによって、履き心地の柔らかさや見た目がまったく違ってきます。

もちろん、革靴を選ぶとき、デザインや形が自分の好みかどうかは一番大切なポイントです。

しかし、製法にも着目して革靴を選ぶと、より自分に合った一足が見つかるかもしれません。

この記事では、数ある製法のなかでも主流の製法のひとつである「マッケイ製法」について詳しくみていきます。

「マッケイ製法」とは?

マッケイ製法は、数ある革靴の製法のなかでもメジャーな製法のひとつです。

マッケイ製法の原型は、イタリア・マルケ地方の伝統的な靴の製法です。これをアメリカ人の “ライアン・ブレイク” が機械化して世界中に広まりました。

ヨーロッパでは、機械の開発者の名前をとって「ブレイク製法」と呼ばれることもあります。

マッケイ製法で作られた靴

マッケイ製法の構造は、とてもシンプル。以下のような工程で作られます。

  1. まず、靴の形状や履きやすさが決まる「木型」を用意します。
  2. この木型に、足の裏が当たる部分となる「インソール」をつけます。
  3. 次に、ソールより上側になる部分「アッパー」を被せます。
  4. そのあと、クッションの役割がある「中物」をつけ、地面に触れる部分となる「アウトソール」を貼り付けます。
  5. 木型を抜き、インソール、アッパー、アウトソールを「マッケイ縫い」で縫い付けます。

ブランドやメーカーによって細かな製造行程に違いはあるかもしれませんが、ざっくりいうと上記のように作られます。

余計なパーツがないシンプルな構造から、マッケイ製法の靴の特徴が見えてきます。

マッケイ製法の特徴

マッケイ製法は、無駄のないシンプルな構造をしています。

ここからは、マッケイ製法のシンプルさによって生まれる特徴(良い部分もあれば悪い部分もあります)をみていきたいと思います。

履き心地が柔らかい

マッケイ製法で作られた靴の最大の特徴(良い点)は、履き心地の柔らかさです。

余計なパーツがついていないのでソールがグニャグニャと反りやすく、歩いたときに靴が足についてくるような感覚があります。

マッケイ製法の靴はソールの反りがいい

マッケイ製法の靴には柔らかい素材が使わることが多く、それもあって一般的に「マッケイ製法 = 履き心地が柔らかい」というように認識されています。

繊細な見た目に仕上がる

マッケイ製法で作られた靴のもう一つの良い点は、繊細な見た目に仕上がるということです。

繊細な見た目が生まれる理由は、コバ(アウトソールが側面に出ている部分)の張り出しがないためです。

マッケイ製法の靴のコバは張り出していない

マッケイ製法は、構造上コバ(アウトソールが側面に出ている部分)に縫い目をつける必要がなく、コバが張り出している必要がありません。

その点、別の主流な製法である「グッドイヤー・ウェルト製法」は、コバに縫い目をつける必要があるため、構造上どうしてもコバが張り出している必要があります。

グッドイヤー・ウェルト製法の靴のコバは張り出している

マッケイ製法で作ることで、コバの張り出しがない繊細な雰囲気の靴に仕上げることができます。

雨水が染み込みやすい

マッケイ製法の靴は、雨が染み込みやすいという欠点があります。

マッケイ製法で靴を作ると、インソールからアウトソールにかけて縫い目ができます。この縫い目を伝って、下のイラストのように雨水が靴の中に入ってきます。

マッケイ製法の断面図。雨水が縫い目から靴の中に入ってくる

雨水が靴のなかに入ってくると、靴のなかの菌が繁殖して臭いがつくほか、インソールが傷んで壊れやすくなります。

マッケイ製法の靴の寿命

革靴の醍醐味は、修理を繰り返しながら経年変化を楽しめるところです。

マッケイ製法で作った革靴も例に漏れず、修理を繰り返しながら長く履くことができます。

履く頻度や履き方にもよりますが、2 〜 6 年は履けると言われています。

革靴の寿命が訪れるタイミングは、「ソールがすり減っても交換できなくなったとき」です。

マッケイ製法は、下のイラストのように「マッケイ縫い」の糸を切ってソールを交換できる構造になっているため、修理を繰り返すことで長く履くことができるのです。

ソールを交換するときのイメージ図

ただし、新しいソールを縫い付けるとき、インソール側に空いた穴は広がったり裂けたりなどして、インソールに傷みが生じます。

そのため、ソールを交換できる回数は 1 〜 2 回と言われており、トータルの寿命は 2 〜 6 年となります。

マッケイ製法と他の製法を比べる

製法の特徴を語るうえで、ほかの製法とどう違うのかを比べてみると、より特徴がはっきり見えてきます。

革靴の製法には、マッケイ製法以外に「セメント製法」と「グッドイヤー・ウェルト製法」という 2 つの主流な製法があります。

この 2 つの製法と比べて、マッケイ製法はどう違うのかを紐解いてみます。

「マッケイ製法」vs「セメント製法」

マッケイ製法とセメント製法は、以下の 2 つの点で違いがあります。

  • 寿命の長さ
  • 雨水への強さ

「寿命の長さ」は、セメント製法の靴は 1 〜 2 年、マッケイ製法の靴は 2 〜 6 年と、マッケイ製法の方が上です。

一方で、「雨水への強さ」は、マッケイ製法よりもセメント製法が上です。

下のイラストは、マッケイ製法の靴とセメント製法の靴の断面を簡単に表しています。

右:マッケイ製法の靴の断面図。左:セメント製法の靴の断面図

どちらの製法もシンプルな構造で、履き心地の柔らかさや、仕上がりの繊細さは同じくらいです。

断面図を比較すると構造がほとんど同じなのが分かりますが、唯一違うのは縫い目の有無です。

マッケイ製法の靴は縫い目があり、糸を切ってソールを交換できるような構造になっています。(寿命は 2 〜 6 年)

一方で、セメント製法の靴は縫い目がなくソールが接着されており、ソールがすり減っても交換できるような構造になっていません。(寿命は 1 〜 2 年)

マッケイ製法の靴の方が寿命が長く、長年愛用することができます。

ただ、セメント製法の靴には縫い目がなく雨水が入りにくい構造になっているため、セメント製法の方が雨水に強いです。

まとめると、

寿命が長く、雨水に弱いのが「マッケイ製法の靴」

寿命が短く、雨水に強いのが「セメント製法の靴」

です。

マッケイ製法は過去の産物!?

マッケイ製法は今は主流の製法のひとつですが、いずれは過去の産物になるかもしれません。

マッケイ製法では、インソールからアウトソールまで「マッケイ縫い」で縫い付けて固定しています。

これは、接着剤の質が悪くソールがすぐに剥がれてしまうためソールを縫い付けて固定していた、というのがルーツだと聞いたことがあります。

現在は接着剤だけでも十分しっかりとソールを固定できるので、強度上はマッケイ縫いは不要です。

マッケイ製法がセメント製法よりも唯一優れているのは、アウトソールの交換が可能という点のみです。

仮にアウトソールの交換が容易にできるセメント製法ができれば、マッケイ製法はなくなってしまうかもしれません。

「マッケイ製法」vs「グッドイヤー・ウェルト製法」

マッケイ製法とグッドイヤー・ウェルト製法は構造がまったく違い、以下のように特徴がほぼ真逆です。

  マッケイ製法 グッドイヤー・ウェルト製法
履き心地 柔らかい 固い
見た目 繊細な仕上がり 重厚感のある仕上がり
雨水への耐性 なし あり

下のイラストは、マッケイ製法の靴とグッドイヤー・ウェルト製法の靴の断面を簡単に表しています。

右:マッケイ製法の靴の断面図。左:グッドイヤー・ウェルト製法の靴の断面図

マッケイ製法はパーツが少ないシンプルな構造ですが、グッドイヤー・ウェルト製法はいろいろなパーツがあり複雑な構造をしているのが分かります。

たとえば、グッドイヤー・ウェルト製法の場合は、T 字型の「リブ」と呼ばれるパーツがついており、これによって履き心地が固くなります。

また、コバ(アウトソールが側面に出ている部分)に縫い目があるため、ソール周りがどっしりとした重厚感のある仕上がりになります。

グッドイヤー・ウェルト製法の靴は縫い目がアウトソール(外側)からインソール(内側)まで繋がっていないので、雨水が入りにくく、なおかつ修理を繰り返しながら長く履くことができます。(寿命は 3 〜 10 年)

まとめると、

履き心地が柔らかく、繊細な仕上がりで、雨水に弱いのが「マッケイ製法の靴」

履き心地が固く、重厚感のある仕上がりで、雨水に強いのが「グッドイヤー・ウェルト製法の靴」

です。

グッドイヤー・ウェルト製法の靴は疲れにくい

グッドイヤー・ウェルト製法の靴は、マッケイ製法の靴に比べ、長時間履いても疲れにくいという特徴があります。

その理由は、クッションの役割がある「中物」の厚みです。

それぞれの製法の断面図を見てみると、グッドイヤー・ウェルト製法の靴の中物は、マッケイ製法の靴の中物よりも厚みがあることが分かります。

厚みがある中物は、履き込むことで足の形状に変形します。

足の形状に馴染んでくると足に負担がかかりにくくなり、長時間履いても疲れにくくなります。

外回りの営業等で長時間歩く方には、マッケイ製法よりもグッドイヤー・ウェルト製法の靴がおすすめです。

マッケイ製法の靴は、こんな人におすすめ

最後に、マッケイ製法の特徴をふまえて、どんな人におすすめかを紹介したいと思います。

革靴を選ぶとき、製法だけで決める方はいないと思いますが、「これとこれどっちにしよう…」と悩んだときに製法が決め手になることもあります。

マッケイ製法で作られた靴がどんな人に向いているか、さらっとでも知っておくと靴選びの参考になると思います。

安価で買える革靴を探している人

マッケイ製法は、構造がシンプルなためコストが抑えられ、比較的安価で購入することができます。

そのため、なるべく安く革靴を購入したい方におすすめです。

マッケイ製法よりもさらに安価な靴にセメント製法で作られた靴がありますが、セメント製法の靴は修理ができないので長く履くことができません。

その点マッケイ製法の靴は、安価ながらも修理を繰り返しながら長く履くことができるのでコスパが良いです。

なるべく安く、そして長く履ける革靴を探している方にぴったりの製法です。

柔らかい履き心地の革靴が好きな人

柔らかい履き心地の靴が好きな方には、マッケイ製法の靴がおすすめです。

マッケイ製法の最大の良さは、シンプルな構造から生まれる柔らかい履き心地です。

「革靴は固くて苦手…」という人でも、ストレスなく履くことができます。

セメント製法の靴も履き心地は柔らかいですが、修理を繰り返して長く履けることを考えると、おすすめなのはマッケイ製法の靴です。

柔らかい履き心地の革靴が好みなら、マッケイ製法の靴を選んでみてはいかがでしょうか。

ほっそりとした繊細な雰囲気の靴が好きな人

ほっそりとした繊細な雰囲気の靴が好きな方にも、マッケイ製法の靴をおすすめします。

マッケイ製法の靴は、コバの張り出しをおさえた繊細な見た目になっていることが多いです。

ゴツゴツとした重厚感のある革靴よりもシュッとした繊細な雰囲気の靴が好きな方は、マッケイ製法の靴を選んでみるといいと思います。

おわりに

マッケイ製法はシンプルな構造で、柔らかい履き心地や繊細な仕上がりが特徴の製法です。

安価で買える靴、柔らかい履き心地の靴、繊細な雰囲気の靴をお探しの方は、ぜひマッケイ製法で作られた靴で探してみてください。

ただし、雨水には弱いので、雨の日にマッケイ製法の靴を履くのは控えた方がいいでしょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。